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不動産取引における成年後見制度

2021.01.22 更新

不動産を所有されている方が「意志表示」を出来なくなったら

不動産売買の取引には、当事者ご本人の「意思表示」が必要になります。昨今、超高齢化社会が進む日本において、認知症の割合も増えており65歳以上の高齢者は2020年の時点で、5人に1人程度(人口の約20%)とされています。

不動産取引において、売主が認知症と判断されご本人による「意思表示」が出来ない場合、成年後見制度を利用することが必要と考えられます。成年後見制度には2種類ありますが、この場合は法定後見制度での活用になり、本人の判断能力に応じて「後見」、「保佐」、「補助」の3つの制度が用意されています。ご本人やその配偶者、四親等内の親族による家庭裁判所への申立により審議・審判が行われ後見人等が開始されます。

後見人について

もし、判断能力のレベルが最も重い「後見」と審判された場合、ご本人を成年被後見人といい、選任される人を成年後見人といいます。成年被後見人(ご本人)が所有する不動産を売却するとき、法律行為にあたる売買価格や契約内容の取り決め、その他売主側の手続き全て、成年後見人が代理をすることになります。

成年後見人には親族が選任される場合(親族選任を希望する場合は、家庭裁判所への申立て時に後見人等候補者事情説明書等の書類添付が必須になります。)もありますが、適切な候補者がいない場合は、司法書士などの専門家が選任されることになります。専門家による後見人は、認知症発症前のご本人のことを全く知りません。専門家が選任された場合、ご本人の財産の管理・処分権限を包括的に代理させることになり、また「ご本人のため」という理念が後見人の判断基準になるため法的判断が非常に厳格になります。

一方、ご本人の判断能力が不十分になる前に、ご本人が信頼できる人を任意後見人として指定し、公正証書などにより任意後見契約を結んでおくことが「任意後見制度」になります。
任意後見契約の内容は、法定後見とは異なり、契約内容を予め自由に決めておくことができます。任意後見契約を結んでおけば万が一、判断能力が低下して認知症と診断された場合であっても、ご本人のことを知っている任意後見人が、「任意後見監督人(家庭裁判所が選任)」の監督のもと、ご本人のために財産を管理することが出来ます。また、法律行為が必要な不動産の購入や売却についても、条件や相手方の選定方法などを予め決めておくことができるので、ご本人にとって財産を守るメリットがある制度となっています。


不動産を所有されている方や、将来への認知症対策、相続対策等の一環として制度の利用を検討している方は、ばんなリーガル司法書士事務所までお気軽にご相談ください。

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